ちょっと前にやってた「はじめてのお使い」
あの番組を見てると、映画の子役がいかに余所行きちゃんなのかが、見て取れる。
一番印象に残ったのは、男の子のお使いに、ひとつ年上の女の子が付き合うというやつ。
ミッション内容はこう。
まず男の子の祖父の家に古新聞を渡しに行き、その後、女の子の祖父の家に薬を届け、そこで伊勢海老を貰って帰る。

古新聞は、お互い協力するようにと、二人で持たないと持ちきれないほど、袋いっぱいに入れられた。
ふたりは意気揚々と出発する。
男の子は最初、男の子としての努めをはたすべく奮闘していたが、すぐにあきてしまい、道草を食うようになる。
そのあおりを、女の子はモロに食らう。
荷物をひとりで持たされたり、待ちぼうけを食わされたり、祖父に渡すはずだった薬を紛失してしまったりと災難続き。
それでも、男の子を叱咤激励している。
・・・・・健気だ。
涙なしには正視できない。
もうええよ、じゅうぶんよ。ダメ男くんなんかほうっぽりなげて薬だけ渡して帰ってきんさい。
そう思わずにはいられない。

それでも気張って、古新聞を渡し終わり、紛失した薬もなんとか渡し終えた。
しかしここで非情な試練が立ち塞がる。
そびえ立つは、箱詰めにされた超重量級の伊勢海老。

おお、なんたる・・・・・
女の子の使命感はもはや風前の灯火。
この時点でこの試練はキツイ!

男の子は空気を読まない。というか読めない。どメクラだ。
君が任務そっちのけで虫や歌と戯れる行為が彼女の糸をすり減らしてることなど、遠い国のニュースほどにも思っていない。
まるで自分を見ているようだ。
「こいつはオレだ!オレなんだ!」
菊千代も叫んでいる。

ぷつり

ついにその糸は切れた。
転んだひざ小僧から赤い血を滲ませながら、女の子はひとり帰路を行く。
まるで憑き物がおちたかのように、男の子が視界に入ることはない。
てくてく、てくてく、歩いてく。
帰りを待っていたお母さんを目にした時、こらえていた涙が溢れ出した。
オレも泣いた。

しかし、ふと思った。
実生活でこういう場面に直面したら、どうであろう。
自分が確認できるのは、目の前で泣きじゃくる娘だけ。
道中の真相がいかなるものであったかなど知る由もない。
下手を打って任務放棄した彼女を叱ったりはしないだろうか。
そして、叱られた彼女はこれからの人生、何を望みに生きていくのか。

そんなことを考えるうち、男の子が伊勢海老をしょってヨタヨタと帰ってきた。
もはやジェル状である。
オロロ〜ン!と咆哮する男の子の元へ、女の子は泣きながら駆けていった。
オレも泣いた。